「さらばリハビリ」~(25)「困ったことは誰に訊こうか?」が一番困った

 私が生活するなかで、業務の上で支援してくれる人々はたくさんいる。私からみて一番近い順、一番頻繁に連絡する順は、ケアマネージャー、訪問介護(ヘルパー)、訪問リハビリ(各療法士)、訪問看護(爪切り)、かかりつけ医、生活保護ケースワーカー、障害支援課ソーシャルワーカーである。

 最初のうちは、困ったことがあると誰に訊いたらいいのかわからないから誰にも訊けないことが多かった。たとえば、介護事業所が低レベル意識のヘルパーたちを送ってきて、自宅というパーソナルスペースにいるのに、土足で足を踏み入れられたように非常に不快なのでキャンセルしようと思い、自治体の障害支援課は「介護事業所はリストがあるので自分で選んでください」と冷たく言い放った。リストはあるがメールはなく、いちいち電話して、もつれた口でしゃべらないといけなかったし、週2回で1時間ずつを希望するのに「スケジュールが合わない(実際は人材不足のため)」からと、2週間以上も待たされたことがあった。一人でゴミ出しできないから、これは一番辛かった。

 「リハビリをしたい」と要求していたケアマネは一向に「施設」を見つけることができず、痺れを切らした私は「ケアマネ クビ」でグーグル検索し、新規のケアマネが私を担当した。訪問リハビリというものがあると初期のケアマネがまったく知らなかったので、私も当然知らなかった。無知なケアマネは担当の利用者たちに害を与える。退院から2年後、私はようやく訪問リハビリというインフラにアクセスできた。が、すでに時遅し。退院後すぐにアクセスしたら、私の脚はもっと早く回復していたであろう。

 爪切りは医療行為である。医療行為は医療の資格を持った訪問看護に依頼し、訪問ヘルパーに頼んでは決していけない。下手くそなヘルパーが私の指に怪我をさせた場合、責任問題になる。最初は爪切りを持参して、会った友人についでに頼んで切ってもらったが、訪問リハビリと訪問看護が同じステーションなので、2週間おきに爪切りに来てもらった。

 訪問リハビリにアクセスしたことで、私はかなりの疑問質問をSTやOTに相談した。OTの専門分野は装具類だが、雑談混じり冗談混じりに相談ができて本当に良かった。訪問リハビリのスタッフたちは、相当経験を積んだ燻し銀レベルであり、回復期病院のリハビリの卵どもの精神的余裕の貧困さに私は唖然とするしかなかった。私の精神的健康状態がみるみる向上した。

 生活保護ケースワーカーは、自治体にもよるが2年で担当が入れ替わる。引っ越しから半年経った後、2階の住人がやってきてひどい騒音となった。私は不動産会社と生活保護ケースワーカーにクレームを入れたが、双方とも具体的な改善策を一切せず、結局私が2階住人と直接バトルを繰り広げ、とうとう2階住人を追い出してやった。

 生活保護の家賃は各自治体で決まっている。私の場合、板橋区で5万円くらいだが、住宅環境が劣悪だと初めて知った。「2階がうるさいので防音設備をしてほしい」と要求しても、「防音設備ができない状況です」の一点張りだ。どうせ引っ越すなら都営のバリアフリー住宅がいい、板橋区から脱出するチャンスだ、と友人から情報を得て、毎年2回、区役所発行の応募要項があり、抽選した上で、さらに審査がある。自治体によるが、独居していた患者が身体障害者になったとき、あらかじめバリアフリー公営住宅を提供するらしい、との話を聞いた。

 無知で世間知らずな私が身体障害者になって、たった一つスペシャルに賢くなったことがある。独身の働き手が身体障害者になると一気に貧困となるが、生き延びるためには実践で試行錯誤し、失敗をしないと前には進めない。ネットの情報もためにはなるが、その情報ゲットの行動は「失敗しないように」という頭でっかちな保険である。もしも現在、私と同じ状況で困っている人たちがいたら、私は喜んでその人たちのコンシェルジュになろうと思う。無料相談だが、叩き上げで正真正銘の立派なプロだ。初心者は経験者に学ぼう。