「さらばリハビリ」~(33)40代以下の「若い失語症の集い」に参加して

 上川あやさんとの会話で知った「若い失語症の集い」を、私はネット検索して参加した。参加費は2000円で、参加者たちの近況報告をダラダラとしゃべり、食事をし、最後に歌を歌って閉めるイベントである。失語症の原因は、私と同じ脳疾患、スキー事故、交通事故などいろいろだ。

 参加者は圧倒的に男性が多い。しかも新参者の参加者が高次脳機能障害で、周りを無視して勝手に話し、二次会で鍋を用意して完成するまで待ち、マイペースに食べ、エロ話しかしない。気分が悪いので参加はもう辞めてしまった。参加費を払ってわざわざヘテロ男性中心の会話に混ざりたくないし、私は私に合ったコミュニティで会話したいのである。

 当時の会長は、大学生のときから脳疾患で失語症になった40代だ。私と同じ左肩麻痺で、杖も歩装具もなく、腕も手首まで動く。20年経つとこんなふうになるのかと私は楽しみになった。会長はスモーカーで、喫煙タイムのときに私とサシで話し合った。「若い失語症の集い」の意義や歴史や、発足当時は医師やセラピスト中心主義の集いであり、参加する失語症者たちは単なる研究調査の対象となった。当事者たちは集いの意義に対して反旗を翻し、医療従事者を全員追い出して、現在のような当事者中心になった、という話だった。

 他の参加者がGSD(ゲート・ソリューション・デザイン)を履いていたので、「それ、どこで入手したの?」と訊いたが、「これは高いよ。13万もする」と答えたので魂消てしまった。GSDを製作した業者さんは長嶋監督がトレーニングする際に麻痺脚の構造を研究し、通常の靴でも履けるようになっている。また、関節がフリーだが、踵の固定と油圧式の反動を利用して歩行する、最先端の歩装具である。

 偶然、このGSDを研究・開発し、販売もする福祉用具会社に勤めていた友人がいて、営業所の住所とメール、担当者を教えてもらった。この装具は特定疾患に指定され、また私は生活保護なので経費はゼロ円である。持つべきものは福祉関係に勤めていた友人とありがたい情報だ。

 オレンジ色(ジャイアンツカラーとも言う)のGSDをゲットして、最初に装着したとき、OTに支えられてやっとのこと歩いた。桜の季節に散歩しようと思ったが、どういうわけか転倒して顔面を打って怪我をし、眼鏡も壊れた。さんざんな歩装具だ。でも使い慣れたいま、この歩装具一つで室内は歩けるし、調子のいいときは杖もいらない(おそらく)。ゆくゆくは外を杖なしで歩くことがいまの私の目標だ。

 なぜ「若い」失語症の集いなのかというと、失語症者たちはたいてい高齢者であり、地域の社会福祉協会などでコミュニティを形成している。若者は年寄りと話が合わなくて孤立しやすいから、コミュニティの名称に「若い」をつけているのだと想像する。失語症なのに、会に参加して一言も喋らないのなら参加する意味がない。

 ちなみに、近所でも失語症の会が開かれているらしいが、私は絶対に参加しない。理由はすでに書いてある。