「さらばリハビリ」~(24)介護事業所は2種類ある~高齢者用と障害者用を試してみた

 1997年の国会で制定された介護保険法に基づき、2000年4月1日から介護保険法が施行された。幸か不幸か、40歳になった私は介護保険の被保険者になった。しかし、障害者自立支援法との兼ね合いがあり、不勉強なケアマネはどちらの制度が使えるか使えないかで混乱することがあった。私の最初のケアマネもそうだった。

 介護保険法と障害者自立支援法は、そもそもまったく違うシステムであり、考えかたも違う。そのため、サービス内容が違うのも致しかたない話になる。しかし、65歳以上になったからといって、いままで受けられたサービスが受けられなくなることはおかしな話であり、高齢者にとってはこれからも同じサービスを受け続けたいはずである。

 たとえば、通院等乗降介助においては、介護保険制度だと要介護1以上が対象となるが、障害者自立支援法だと要支援1レベル程度から適応となる。このように、いままで受けてきたサービスと見かた、考えかたが変わると理解することが重要だ。

 私のような障害者は、介護保険を申請したときの要介護度が2以下と出てしまうことが少なくない。そのため、日常的なサービスの限度額が少なく、障害者自立支援法のときよりもサービスが減ってしまうことがある。こういう事情を知っていたら、介護事業所迷子にならずに済んだのに。

 このような場合、介護保険制度の限度額で確保できないとみなされ、障害者自立支援法において不足分のサービスが適応されることがある。サービスの不足等については、各自治体で相談し、利用できるサービス量が変わらないよう話をすることが必要である。

 障害者固有のサービスに関しては、介護保険のサービスにはないため、引き続きサービスを受けることができる。障害者固有ではなく、介護保険にないサービスの場合は受けられないこともあるため、継続してサービスを受けたい場合には市区町村およびケースワーカーと相談することが重要となる。

 たとえば、私は身体障害者2級1種であり、電動車椅子ユーザーである。電動車椅子と歩装具(短下肢装具)は障害者自立支援法のサービスで、介護用ベッド(手すりと電動リクライニング付き)は介護保険のサービスである。訪問リハビリは障害者自立支援法の、訪問介護介護保険法のサービスだが、自立生活センターなどの介護事業所は、障害者自立支援法のサービスである。

 つまり私は、2つのサービスのうちどちらも使えたのである。これは失敗した。

 介護保険法の施行で雨後の筍のようにあちこちに介護事業所が生まれるが、身体障害者1年生の私は、どこの介護事業所が私に合うのか、その区別ができなかった。自立生活センターの数は、介護事業所の数よりも圧倒的に少ないのである。

 最初の介護事業所はヘルパーたちの意識が低く、私がいちいち「ここはこうしてほしい」と教育してやらないといけなかった。あるヘルパーは無断で冷蔵庫のドアを開けた。私は気分が悪くなった。ネットで検索すると、元は「家政婦紹介所」であった。次の介護事業所はヘルパーが全員優秀で、私も気に入っていた。しかし、その気に入ったヘルパーが通勤用の自転車で転倒し、2ヶ月の休養となったが、代わりに来た新米ヘルパーとの落差があって鈍臭く、私はお気に入りのヘルパーの回復を待たずに介護事業所をチェンジした。

 3回目の介護事業所は、事業所名も理念も高いのだが、「あれはできません、これもできません」と理念を通すことは潔癖で立派だが、利用者にとっては不便で不快であり、融通が利かない。不快になった私は今日やってもらうことをメモに書いてヘルパーに無言で渡した後、イヤホンでずっと音楽を聴いていた。その態度がヘルパーにとっては威圧的に感じたのかもしれないが、ちょっとしたミスを指摘すると、後から主任がやってきて、「ミヤマさんは高圧的すぎるとヘルパーから苦情が入りました」とさ。お前がミスしたんだろうに、それを指摘しただけで萎縮して勘違いで印象づいたとはな! こっちからキャンセルだ!

 結局私は介護事業所を3回キャンセルし、最初のケアマネも首を切り、障害当事者が運営する自立生活センター(CIL:Center of Independent Life)が近くて便利で、融通が利き、私の肌にぴったり合った。そのセンターは新設した障害者用入浴施設もあって、これで念願の風呂に入れる! と私は喜んだ。ケアマネが書くはずの介護計画書を「セルフプラン」として区役所サイトでダウンロードし、エクセルで作成して区役所に提出することもセンターの代表から教えてもらった。センターのメーリングリストに入った私は自立生活センターのNPO法人の理事となり、毎年12月になると板橋区で開催される「障害者祭」に通ってバイトしている。

 後になって思い出すと、「介護保険サービス証」と「自立支援サービス証」とが2つあり、そのサービス証を渡して利用者リストにするのが2つの介護事業所の違いなんだろう。たぶん、これで合ってる。