モンスターなテイコさん、エイリアンなススムさん(2)
つづき。
テイコさんが自殺した日は、ちょうどススムさんの誕生日だったので、打ち合わせ中にススムさんから電話が入り、
「どうしたの? 自分の誕生日だから『おめでとう』って催促したの? ほしがるよねー」とオデが冗談ぽく言うと、
「母さんが死んだ。自殺した」とススムさんはマジレスしました。
ええええ!? あの殺しても死なないような逞しい女が自殺するなんてありえない! と驚いたオデは、さっそく実家に帰るために荷造りをして、羽田に向かいました。
オデは、当時お付き合いしていた女性(ヒロコさん/仮名)にそのことを言いました。占いをするのが好きなので、一昨日も占いをしてきて、オデのことも占い師さんに話したら、その占い師さんは、「…お母さん(テイコさんのこと)は、どうやら生きていないようです」と言われて、二人でびっくりしました。
なんとなくですが、オデはテイコさんが自殺したんだな、と静かに納得しました。
(ヒロコさんは既婚者ですが、10年前に夫を病気で亡くし、それから占いなどで生きるよすがを求めていたようです)
その途中、刑事さんからの電話があり、オデは思わず立ち止まって電話に集中しました。飛行機の最終便には間に合いませんでした。ススムさんから電話があったのは、確か夕方近くでした。オデは打ち合わせ中のオフィスのビルの外で電話したんですけど、その日の夕焼けは非常にきれいだったのが、やけに印象的でした。
翌日、オデは飛行機のチケットを取り直して実家に帰りました。
北国の3月は雪が積もっていますが、不思議と寒くはありませんでした。
フミカさんがシクシク泣いているのと、そのダンナがヘラヘラ笑ってススムさんに媚び売ってんのと、二人の幼い姉妹がキャッキャとはしゃぐのを見ました。ススムさんは相変わらず穏やかな表情と態度でした。
縊死したテイコさんの顔は、なんか醜かったです。
死斑というのが出て、皮膚が紫に、まるで血管のように走っています。口はポカンとアホのように開けていました。
特に排泄物はなかったようです。
つい先日、ヒロコさんの母親(キヨコさん)も老衰という衰弱死(転倒して大腿骨を骨折して長らく入院していましたが、「点滴も栄養剤も要らない」とご本人が拒否したのです)で、その病院に行って死んでいる顔を見ました。眠っているように見えました。ヒロコさんによると、キヨコさんの布団はまだ温かかったそうです。
テイコさんが自殺したときには悲しみよりも怒りが湧いてきましたが、結局オデは、「おサムライさんみたいだな〜」と思いました。キヨコさんもまた、潔い死にかたです。
「通夜は今夜で、葬儀は明日になる」とススムさんは言いました。
オデには実家近くの友だちも同級生もいませんでしたから、時間を潰すのが大変でした。
ああもう! これだから田舎ってものはよぅ!
つづく。
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