フランシス・ハ

1)バレエカンパニーの研究生フランシスは大学時代からの友人ソフィーとルームシェアをし、「私たちって熟年のレズビアンカップルみたいよね」と笑った。あるときフランシスは彼氏のダンに、猫を2匹飼うから一緒に世話してほしいというのだが、フランシスは「ソフィーとのシェアを解消できない」とダンの同棲提案を却下し、二人は別れてしまう。

2)しかし、ソフィーがアパートの更新をせずに、フランシスにはちょっと高いトライベッカへ引っ越すと言い出す。寝耳に水のフランシスは深く傷つくが、ソフィーの友人であるレヴとベンジーの家へ転がり込み、気ままな日々を楽しむ。

3)ソフィーが彼氏パッチと本気になりかけていることにいら立ち、ギャラをあてにしていたクリスマスダンス公演のメンバーに選ばれず、傷心のフランシスは実家のサクラメントへ戻り、家族と束の間の幸せなときをすごす。

4)実家から戻ったフランシスは無職状態で、レヴとベンジーのシェアハウスの家賃が払えなくなり、そこまで親しくはないバレエカンパニーの友人レイチェルの家に居候する。

5)レイチェルの親戚がパリにアパートを持っていると聞き、フランシスは弾丸でパリ旅行へ。しかし、パリ在住の大学時代の友人に連絡するも、まったく電話がつながらない。結局何もせずニューヨークへ戻ってくる。そして、親友ソフィーは彼氏パッチの転勤に伴い日本へ引っ越して行った。

6)仕事のないフランシスは母校の大学寮の管理人のアルバイトを始めた。田舎を満喫するが、チャリティーパーティーでウェイトレスをしていたところ、偶然、親族の葬式で帰国していたソフィーと再会する。なんとソフィーは彼氏のパッチと婚約していた。何も聞いてなかったフランシスはショックを受ける。パッチと喧嘩したソフィーは、その夜フランシスの寮を訪れる。久しぶりに女同士の強い友情を確信するフランシスだったが、早朝ソフィーはパッチの元へと帰っていくのだ。

7)ソフィーがパッチとともに新しい人生に踏み出そうとしていることをようやく認めたフランシスは、ついに自分を見つめ直し、居場所を固める決心をする。

↑これはパンフレットのSTORYをコピペしたもの。

これ以外にフランシスの科白が印象に残っている。
「私は恋愛に求めるのは、ある特別な瞬間よ。だから恋人がいないかも。貴重なことなの。誰かと同じ空間にいて、特別な存在だと、自分も相手もわかっている。でもそこはパーティー。お互い別の人と話してる。笑って、楽しんで、ふと部屋の端と端とで目が合う。嫉妬でも性的な引力のせいでもない。相手が、この人生での運命の人だから。不思議で切ない。人生は短いけれど、そこに二人だけの秘密の世界があるの。他の人たちから見えない。私たちの周りには、そんな次元があるの。ただ、気づいてないの。それが、私が恋愛に求めるもの」

フランシスはソフィーがパッチの紹介をして、二人で睦まじくしゃべっていると、「私も仲間に入れてほしい。家族みたいになりたい。ねえ、いいでしょ?」と懇願するが、二人は困った表情で沈黙している。観客は爆笑してたが、フランシスはけっこうマジでこれを言っていた。フランシスの別の科白がオデのなかに浮かんだ。「そこは私の席よ、なんであなたが平然と座っているわけ? おかしいじゃない?」

オデは、元カノが言っていたことを思い出す。「わたしがレズビアンだと気づいたのは、それまですごく仲良くしていた大学時代の親友が結婚したこと。ショックだった。悔しかった。私はあの子が好きなんだってこと」

その友人はお店を二人でやっていて、ときどき店を訪れ、楽しそうに子どもと遊んでいたが、元カノは、「本当なら私があの子と一緒に店をやっていた。そういう夢を彼が全部奪った」。

映画では、ソフィーとパッチがしょっちゅう喧嘩しているし、いまだ婚約中だ(そしていずれ結婚するだろう。結婚=転勤のためにソフィーは仕事を辞めた)。そしてフランシス=オデの元カノも、一人暮らしをはじめ、いろんな女の子とセックスした(ただし映画では“セクシュアルな”行為は一切見せない、というか行為自体がない。男とも女ともフランシスは「非モテ」である)。

こうして、「女同士の友情」は消えて行くが、それ自体は別に悲しいことじゃない。婚約、結婚したことにフランシスは気づかないのは、悲劇なのか喜劇なのか。元カノも悲劇的に語りはしないし、エンジョイしたり、淡々としているかのように見える。

そういう元カノも、オデと約1年付き合って別れた。男ができて子どもを産むためだ。オデは元カノとダンナと三人で一緒に子どもを育てたかった。別れてずいぶん経つが、いまは元カノの子どもの年を、「いまはまだ小学校だな」「もうそろそろ中学校かもしれない」「好きな男子っているのかな? 初潮は始まったのかしら? そういうとき、元カノはどういうふうに接しているんだろう?」と想像している。いまは悲しくも嬉しくもない。とにかく、お互い新しい生活を始めたんだから、せめてそれぞれが平穏無事でいることを切に願っている。