料理分担のリバーシブル度

先月の初旬から同居人(D)がやってきて、はやくも1ヶ月が経った。

Dは掃除や片付けはあまり得意ではないが、料理は手際がよく、食材や調味のバリエーションが豊富。料理以外にも話題の引き出しや人脈も豊富なので、毎日とてもよい知的刺激を受けている。

わたしも料理は嫌いじゃないし、余裕があるときにはちょっと凝ったりするほうだが、余裕がまったくないときには食材のストックがあるにもかかわらず、つくるのが面倒で外食し、結局冷蔵庫のなかのものをことごとく腐らせてしまったりして、腹は満たされても精神的には荒んだり凹んだりすることが少なくなかった。もっとひどいときには、買い物にいくのもつくるのも食べにいくのも面倒、という三重苦を味わうこともあった。

ところが、この1ヶ月のあいだに食のQOLがぐんとあがった。買い物にいく手間やつくる手間が半減するだけで、日々の生活がこんなにラグジュアリーで居心地のいいものになるとは思わなかった。歴代の仲良しさんたちは、1人を除いて、まったく/ほとんど料理ができないひとたちだったので、どちらかの家でつくって食べる場合にはいつもわたしがシェフ役であった。

いまさっき「1人を除いて」と書いたが、その1人の仲良しさんよりもDとの関係のほうが快適に感じられる。それはなぜかと考えてみるに、料理の得意な仲良しさんは、食事をつくるのははなから自分の役目と思っている節があり、わたしがつくろうとすると申し訳なさそうに抵抗を試みたり、こちらは必要としていないのに調理作業を手伝おうとしたり、黙ってまかせてくれなかったのである。むしろ食事は全部その仲良しさんにおまかせしておけばよかったのだろうが、わたしだって自分でつくって食べたいときもある。そういう場合、その仲良しさんはちょっと面倒な相手だったのだ。

ところがDの場合は、わたしが用意していると、「後片付けはやるからね」と分業を買ってでてくれたり、メインの準備があらかた終わったところで、タイミングよく「スープ的なものつくろうか?」とバトンタッチしてくれたりと、こちらの動きや流れをよく読んで、わたしに負荷がかからないような、かつ食事全体としてはバランスをとる方向の、そして「それがあるとよりいっそう素敵ね!」と思うアイディアをもって引き継ぎをしてくれる。快適とは、そういうことなのだ。

こちらの邪魔はされたくない。けれどもこちらの手の足りないところはできればヘルプしてほしい。そういう、わがままで複雑な(無意識の)要望を、Dはよく読み取ってキャッチボールしてくれる。こちらの作業を中断するかのように、「なにか手伝おうか?」などの常套句は決して言わない。

セックスの場面においても、こういうキャッチボールがスムーズにできる相手とだったら、きっと快適な性生活が送れるんだろうなと思う。残念ながらDとはそういう仲ではなかったし、これからもそういう仲にはなりそうもない(「残念ながら」はただの枕詞であって本気で残念がっているわけではない。念のため)。

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ついでに、自称「リバ」との、キャッチボールにならなかった残念なセックスの記憶について書き留めておこう。

・だいたいいつもこちらが先攻で、イッた後ぐったりして眠ってしまい、こちらを取り残すリバ
「後片付けはまかせて!」と言いながら、食後すぐごろんと横になり、「もうちょっとしてから(片付ける)」と言った舌の根も乾かないうちに寝息を立てはじめるようなもの。こちらは別に後片付けを期待していないので、「やるやる」と言ってやらないくらいなら、最初から「リバ」アピールしてくれるな。言動不一致なリバより言動一致しているネコのほうがまし。

・セックスのきっかけづくりはこちらにゆだねておきながら、いざはじまると急に主導権を握ろうとするリバ
相手からのアクションがまったくないので、じゃあこちらからいきましょうかとエンジンをかけた途端、いきなりハンドルをもぎとって運転しようとするから危なっかしくてしかたがない。だったら最初から自分でイグニションキー廻せよって感じですが、キスしたとたん急にターボかかるひとっているんですよ。オン/オフの差の激しいひととのキャッチボールはこちらが全面的に苦労するだろうし、相手が上達するとも思えない。

・こちらはイクことに大した価値を置いていないのに、やたらとイカせようとするリバ
タチをネコ化させるのはわたしも楽しいと思うけれども、わたし自身がネコ化するには身体条件的にいろいろクリアしなければならない関門があるのであって、それを知らずに我流でこちらを攻め、イクどころかまんこがひりひりになって不発に終わると、相手がものすごく気まずいオーラを放つのでいたたまれなくなる。「イカないお前が悪い」とストレートに責めるわけではないけれど、「こんなはずじゃないのにおかしいおかしい」と首をひねられると、まるでイカないわたしがおかしいのだと非難されている気がする。ふざけんなてめー。

ほかにもいろいろあるけど、全国1200万人リバのうち半数は確実に敵にまわしたところで、今日はおしまい。

*上記写真は、先月末、新たに我が家へやってきた子。こうしてキーボードを打っていると手にからんできて邪魔をする黒くて小さなチンピラである。