婦人科医に聞ける!FTMと治療 本当のトコロ ー健康に暮らしていくためにー(8)
▶「子宮頸がんの予防はどれだけ受けてるの?」といったら、本当に日本は検診受けない国民なんですね。婦人科に行きづらいというのも影響しているのかもしれませんが、海外は受けるのが当たり前ですね。病気が発症する前に受ける発想が日本になかなかなくて、病気になったらしょうがなくて受ける人が多いんだけど、それじゃ遅いんですよ。予防するのが第一なので、検診はちゃんと受けないとならない。
すでに手術で子宮を取っちゃう人は別ですが、子宮があって、なおかつもし一回でもセックスの経験があればこれは毎年受けなくてはならない。で、稀なんですけど性経験がなくても頸がんになるのはあるんです。不明な感染経路でHPVにかかっちゃうことがあるので、経験のない人でも5年に1回くらいはやっといたほうがいいかな、と思います。
「健康は病気ではない」ということなんですよ。「肉体的にも精神的にも社会的にもすべてを満たされた状態が健康です」ってWHOが言ってるんだけど、なかなか日本はこの辺がうまく回っていない感じです。
自分の身体に対することを知ってほしいと思います。正しい知識を身につけて、なりたい自分になろう、ということだと思うので、ケースバイケースでいろいろなかたがいると思うけど、自分の状態がどうなのか、いま何に一番気をつけないといけないのかということです。
だから、子宮が残っていれば子宮の病気になることがあるので、検診は受けましょう。自治体の検診もあるので、2年に1回くらいなんですけど、中野区や隣の練馬区も新宿区も杉並区も区が補助してお金出して、ちょっと安く受けられます。中央のほうへ行くとけっこうタダ、財政がある豊かな区はみんなタダなんだけど、この辺はちょっと貧しい区のなので、お金をいただいて、中野区は1000円、練馬区は700円、新宿区は900円というお金でできます。その区の指定した婦人科でできます。
さっきも言いましたが、卵巣はホルモンを出す大事なところで、これを取って一気に女性ホルモンがなくなると一気に更年期に突入した状態になるんですね。更年期の症状って多岐にわたり、一番多いのは一気に熱くなって汗かいて、すごく体調が悪くなることです。だるかったり疲れやすかったり、ちょっと動くとすぐ横になっちゃう状態とか、目眩とか耳鳴り、頭痛、肩こり、首こり、腰痛も出ます。皮膚は女性ホルモンが一気になくなるので、カサカサになって乾燥してきて、かゆみがあったりとか、急にアレルギーになったりとか、免疫系も女性ホルモンが司っているんですよ。だから免疫が弱くなっちゃうし、いろんな病気にかかりやすくなる。なにしろ身体を守ってくれたものが一気になくなるのだから、それはいろんなところに不具合が出てきて当たり前なんですね。
若いかたたちは年齢がカバーするので、いますぐどうこう起こってくることはないのかもしれないけど、何年も経ってくると、やっぱりそういうふうになってきます。かなり状態は悪くなると思うんですね、何もしないとね。
で、男性ホルモンは健康ホルモンではないんですね。女性ホルモンが健康ホルモンなので、女性ホルモンがゼロになっちゃうのは、ちょっと得策ではないと思います。もし更年期の症状が出ているのであれば、少し補う方法があります。飲み薬の場合は血栓のリスク(脳梗塞、心筋梗塞など)が少しあるので、内服薬よりも塗り薬とか貼り薬とかあります。お腹に貼るパッチ剤とか、腕や脚に塗るジェル剤があります。そういうのを量を調節してうまく使っていくと、QOLが上がると私は思います。
でも、そういう情報って精神科の先生はまったくホルモンのことご存じないので、伝わらないのね。来てくださればいくらでも情報提供できるんだけど、なかなか産婦人科には行きづらいこともあるので、その辺が問題かなと思っています。本当はうまく利用していただいて、みなさんが健康に、自分が生きたいように生きるのが一番いいと思います。
つづく。