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『キャピタリズム マネーは踊る』(2009年、アメリカ)

映画評

ちょっと今さら感もありますが、ふぇみん2009年11月25日号に掲載された映画評のご紹介。日本で公開されてすでに1ヶ月が経ちましたね。

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 本作が完成した今年(2009年)は、監督デビュー作『ロジャー&ミー』発表からちょうど20年目。最新作のテーマはずばり「お金」で、マイケル流ドキュメンタリーの集大成でもある。お決まりのアポなし突撃取材とブラックな笑いに満ちたエンターテイメント作品だ。

 映画の冒頭には、「ローマ帝国の勃興」を扱う歴史番組の映像が流れる。貴族たちが酒池肉林に戯れる一方、奴隷たちは厳重な監視の下で過重労働を強いられる。そこに現代の工場労働者たちの映像が重なる。奴隷制は過去の遺物ではない、現代も続いているのだ、と映像は示唆している。

 つづく舞台は現代の米国。保安官によって人々が自宅から追い出しを受けるシーンだ。不況による失業で住宅ローンが支払えなくなり、抵当に入れられた家を銀行に奪われる。こうして町は空家だらけになり、貧困ゆえの犯罪が頻発し、荒廃は加速度を増していく。

 『ロジャー&ミー』は、マイケルの故郷フリントでGM工場の大量解雇に揺れる様子を取材したものだ。しかし、この大量解雇は経営不振が原因ではない。人件費の安い外国に工場を移すため、つまり「企業がもっと儲けるため」だ。解雇された人々は家と町を追われ、フリントはゴーストタウンと化した。

 だが、20年後の現在、事態はより深刻だ。いまや米国では、8人に1人が7秒半ごとに家を失っている。大学生でさえ入学時から学費の支払いに学生ローンを組まされ、卒業後の20〜30年先まで借金まみれになる。

 金融業界は、あの手この手で民衆の金を吸い上げるシステムを編み出している。ハイリスク・ハイリターンなデリバティブ金融派生商品)は、仕組みがあまりに複雑すぎて、専門家ですら満足に説明できない。

 マイケルが批判する「キャピタリズム(資本主義)」とは、「合法化された強欲なシステム」のことだ。ピラミッドの頂点に立つ数人だけがほとんどの富を独占し、底辺の者たちは彼らの命令を遂行する勤勉な奴隷になりさがっている。このような仕組みは資本主義を利用した独裁主義であり、民主主義に反する。諸悪の根源は金融経済と政治の癒着にあるとして、マイケルは鋭いメスを入れていく。

 原題『CAPITALISM : A LOVE STORY』は、金持ちは自分のお金を愛するだけでなく、民衆のお金もほしくてたまらない、という意味からつけられた。ならば邦題も『キャピタリズム 略奪愛の物語』とすれば、マイケルの風刺精神がうまく表現できたはずだ。


公式サイト『キャピタリズム マネーは踊る』