「レズビアン」を中心としたパレード記録映像を観る


ふぇみん2010年4月5日号に掲載された記事のご紹介です。

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2月21日、新宿区早稲田のパフスペースにて、1995年と2006年に開催された「東京レズビアン・ゲイ・パレード」のドキュメンタリー映像の上映会と、監督2人を囲んでのアフタートークが行われた。

東京レズビアン・ゲイ・パレード(性的マイノリティのデモ行進)は94年スタート。00年からは主催団体が交代して再開し、通算6回行われている。
 上映作品は、冨岡千尋監督『TLGP that matter』(2006、8分)と、なるさ監督『影のない1時間』(1996、27分)。圧倒的にゲイ男性の参加が多いパレードながら、いずれもレズビアンを中心に据えた貴重な記録だ。

団結だけでは不十分
『TLGP that matter』では、パフォーマンス・アーティストのイトー・ターリさんの作品「Rubber Tit」(ゴム製の巨大なおっぱい)とともに歩くレズビアン・フロートの様子や、主にレズビアン・アクティビストたちへのインタビューが収録されている。
あるとき冨岡さんは、スイスで行われたレズビアン・ゲイ・パレードのドキュメンタリー映像を観る機会を得た。そのとき、日本のパレードも記録しておこうと思い、カメラを回すことにしたという。
「『団結』だけでパレードはできないし、『パレードができてよかったね』だけでは収まらない課題がある。特に06年当時「東京レズビアン・ゲイ・パレード」という名称ではレズビアンとゲイ以外は参加しにくいとするパレードの『名称問題』が持ち上がっていたし、ゲイ男性以外の参加者がなかなか可視化されない、数十万人が参加する海外のパレードに比べて規模がとても小さいなど(東京は3000人規模)」

日陰から日なたへ
『影のない1時間』は、日本史上2回目に行われたパレードの記録映像。翌97年の東京国際レズビアン&ゲイ映画祭の公募に出展し、準グランプリ受賞。サンフランシスコをはじめ海外の映画祭でも上映された。
作品タイトルは、それまで「日陰の身」だった性的マイノリティたちが、真夏の東京・渋谷の人ごみのなか、白昼堂々と声を上げたことと、当時のパレード全行程(千駄ヶ谷の明治公園から渋谷の宮下公園まで)を歩くと1時間かかったことに由来する。前年に結成されたレズビアン・パフォーマンス集団「国際ビアン連盟」のメンバーたちが派手な衣装やメイクでダンス・パフォーマンスを行う様子や、レズビアン・シンガーのCHUさんによるギター弾き語りライブ、当時なるささんが住んでいたシェアハウス「高円寺ハウス」の住人たちへのインタビューが収められている。
「高円寺ハウス」は93年4月オープン。当時40歳だったなるささんが共同生活をしたいと思ってはじめた。国内外の多くのレズビアンたちが集った場所だ。インタビューでは、レズビアンであること、今の自分の生活、今後の展望などが語られた。
 上映会にはCHUさんも参加し、15年前の映像で歌った『さあみんなでカムアウト』をトークの最後に披露してくれた。

10年の歳月が物語る
『影のない1時間』ではサングラスをかけた参加者が目立ち、パフォーマンスに趣向を凝らすなど、沿道の観客を強く意識していることがわかる。トップレスにペインティングした女性たちもいて、当時でも充分「過激」「挑発的」と見られたはずだ(後にトップレス参加は厳重に禁じられた)。
一方、『TLGP that matter』はカジュアルなスタイルの参加者が多く、前者ほどの気負いはあまり感じられない。普段着のまま参加できる気楽さがある。
個人的には、新しいムーブメントとして強烈なパワーを発揮した前者の映像に強く惹かれるが、ムーブメントを維持する時期となっては、黎明期とは違ったパワーが必要なはずである。
今夏、3年ぶりにパレードが開催される予定だが、今後のためにもこれら2つの映像を振り返ってみてはいかがだろうか。

自主上映会の問合せ先は、連連影展 FAX03(3401)8944 fav(at)renren-fav.org