たぶん、マスコミは今後沈黙するだろう―神いっき、「解離性同一性障害」か? 「性同一性障害」か?

一昨日、神いっきの公判に行ってきた。精神鑑定の最初の医師の見解は弁護人と裁判長が否認しており、新たな精神鑑定を行った医師が証人として喚問された。全部で3時間の公判で、時が経つとトイレに行く傍聴人が幾人も出て、いやはやだった。

この医師は無名であるが、素晴らしい仕事をしている。解離性同一性障害の患者を300例診察しており、うち10例が統合失調症詐病であった。臨床医として33年の経歴を持つ。

「神いっきが主人格として、複数の人格を持っている解離性同一性障害と診断しました。解離性同一性障害は、たとえるなら、主人格はバスの運転手で、耐え難いストレスがあると、後部座席に座っていた他の人格が主人格を押しのけて、主人格は助手席に座って休眠しているようなものです」


「この事件に関りを持つ人格は、子どもっぽいけどすべてを見ているゲンキくん、投げやりで酒が好きなコウジ、神いっきが12歳のとき突然ピンクのランドセルを背負ってやってきたミサキの3人です」

 

精神鑑定は、ゲンキくんと他の人格が脳内で相談・会議をし、ゲンキくんになってコウジやミサキの言葉や思いを担当の医師に伝える、というものである。

 

検事「被告が乳房切除したとき、ミサキの反応はどうでしたか?」

医師「悲しい、と言ってました」

検事「解離性同一性障害と多重人格は同じものではないですか?」

医師「同じものですけど、従来の手垢がついた名称を、手垢がつかないように名称を新たにしました。この疾患名はDSM(アメリカ精神医学会・精神疾患の分類と診断の手引き)によるものです」

検事「被告が演技をしていない、つまり嘘はついていないと診断されたのは、なぜですか?」

医師「本人が不利益な証言までしていることから、そう診断しました。演技をする、他人のふりをするというのは、込み入った事情があるにもかかわらず、矛盾せずに証言をするのは常人には不可能なので、本当ではないかと判断しました」

裁判長「ゲンキくんのような子どもっぽい人格は、年をとらないのでしょうか?」

医師「年をとる場合もありますし、とらない場合もあります」

 

オデの見解では、ミサキが「声優のアイコ」として犯行に及び、それでもミサキは自己利益で強盗した形跡はない。ミサキは「女になりたい」一心で女装したまでだ。

 

しかし、解離性同一性障害の患者が罪を犯した場合、主人格ではないものの犯行の責任を、裁判所はどう判断するか? である。ちなみに解離性同一性障害の患者の犯罪はすでにあり、判例となっている。その判例に倣って判決を下すのだろうか。

 

解離性同一性障害になった原因は、神いっきが幼少のころ、父親の激しく厳しい暴力暴言があり、次回の公判は母親を証人喚問する予定である。おそらく、医師の証言(解離性同一性障害)は認められる可能性がある。

 

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この事件が起こったとき、「性同一性障害トランスジェンダー」の表記統一もなく、「女装した犯人が昏睡強盗か?」「容疑者は妊娠」「出産したい」などというセンセーショナルなものだったので、世間の眼差しはいささか下世話な感じがしたが、我々の業界(?)では早くも「神いっきは性同一性障害か? 解離性同一性障害(多重人格)か?」という議論があった。

 

解離性同一性障害(多重人格)」だと「心神喪失」が認められて「無罪」の可能性があるが、あくまで「性同一性障害」だと「心神喪失」が認められる可能性はなく、「懲役5年(強盗の最低量刑)」は確定的である。

 

たとえ「無罪」が確定したとしても、その後の神いっきの生活が心配である。治療に専念するためとはいえ、人格が「統合」するのはいつになることやら。そもそも神いっきは「性同一性障害」ではなく(診断名がない)、乳房切除やホルモン注射をし、名前を変更して「男性」になった人である。子宮や卵巣を内摘しなかったのは金銭の限界の問題と思われ、要件を満たさなかったために戸籍の性別変更ができなかったのであろう。

 

それから、オデが個人的に東京拘置所にいる神いっきに何度か手紙を書いて接見しようとしたが、神いっきは拒否した。もしかすると彼はトランスフォビアじゃなかろうかと思ったが、いまはそれはどうでもいい。昏睡強盗という犯罪をしたことも重大だが、その原因となった解離性同一性障害の治療をするのが先決だ。