ノン・ヘテロカップル(あるいは「おひとりさま」)のための『逃げ恥』

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テレビがないオデはTVerあるいはネット動画で鑑賞してきた。なぜって、オデは「ジェーン・スー生活は踊る」のヘビーリスナーで、「ジェーン・スー相談は踊る」や「トップ5」から、DJとしてのジェーン・スーのファンだからである。そのジェーン・スーが「『逃げ恥』いいね! 漫画もドラマもずっと観てる」と言ったとき、オデは『逃げ恥』に興味を持った。

 

前置きはこれくらいにしておこう。このドラマや原作の漫画が大ヒットなのは周知の事実である。だが「契約結婚」とは、「一番最初」「ダントツの1位」「最後の切り札」のように重複表現と同じであり、ヘテロ・カップルには、その重複表現に気づかない

 

それもそのはずである。そもそも結婚は男女二人が共にする性生活の契約でありながら、現実のヘテロ・カップルは決まりや約束をなおざりにし、お互いに決まりを破り、それでも契約は破棄せず続行される、甘々な契約なのである

 

たとえば、既婚者の浮気。これは単婚(一夫一婦制)と呼び、民法第4編「親族」第2章「婚姻」で「重婚の禁止」と記載されている。ほかにも「夫婦の氏」や「同居、協力及び扶助の義務」と明示されている。“恋しちゃった”ヘテロ・カップルは法律を読まずに入籍し、自治体に婚姻届を出して職員に「おめでとうございます」と祝福される。

 

まさしくおめでたい日本国民同士のヘテロ・カップルはスムースにゴール・インできるが、これだけでハードルが高いカップルも大勢いるのだ。同性カップル、どちらかが外国籍部落民のカップル、婚姻は不利益だからしない、と自覚ある女性たちがそうだ。

 

オデは法律に詳しくないし、カップル生活にも詳しくない。他にもっとプロフェッショナルなカップルはいるだろう。とある同性カップルは養子縁組したり、公正証書を交わしたりするケースもある。はた目には男女カップルだが、事実婚を通すため、毎年法務省へ行き帰化申請をして、ようやく許可された人もいる(なんと10年かかった!)。渋谷区や世田谷区の同性パートナーシップ条例もあるが、シングルのオデでもわかるくらいに、その制度は婚姻との落差があるだろう

 

なんで前置きがこんなに長くなったかと言えば、『逃げ恥』ドラマで盛り上がってるのはおおよそヘテロの民だろうと思っている。ノン・ヘテロの民は「何をいまさら感」があるのだ。それでも今回はヘテロに乗っかって盛り上がってるノン・ヘテロもいるかもしれないし、むしろシスヘテ物語に飽き飽きしている人たちのために、オデはこれをささやかに、いま書いている

 

ネタバレ上等だが、主人公のみくりは「契約結婚事実婚)」の相手ヒラマサと何かトラブルがあると、冷静に距離を保つために、同居していた場所から一時的にエスケープする。最初はみくりの実家だったが、次は母方の伯母・百合ちゃん(アラカン独身キャリアウーマン)の自宅で一緒に住む。これが同性婚やおひとりさまにも敷衍できるアイディアの宝庫なのだ(ちなみにオデは漫画は読んでいない。知人から教えていただいた)。

 

原作者の海野つなみ先生は、「もし恋愛が仕事だったら? 仕事なら対価が必要だ。そもそも対価が必要な恋愛はあるのだろうか?」と、漫画で思考実験をやっている、とおっしゃっていた(参考:『逃げるは恥だが役に立つ』大好きジェーン・スーが、原作漫画家・海野つなみ先生に恥を承知で聞いてきた!特番)。

 

『逃げ恥』のドラマと漫画はほぼ同時に完結する。ドラマの最終回は12/20、漫画の最終回は12/24。そのとき、ノンヘテカップルやシングルにも深い読みや解釈が楽しめるぞ。乞うご期待!