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『スパニッシュ・アパートメント』(原題:L'auberge espagnol)

ヘテロ異性愛)女性とゲイ男性の場合は、「男好き」という共通点から恋愛トークに花を咲かせやすいが、レズビアンヘテロ男性はその限りではない。むしろレズビアンをも欲情の対象にしてしまうヘテロ男性とのあいだに、友情など成立するはずがない。そのような怒りと失望の前に一つの可能性を投げかけてくれたのが本作である。

パリに住む大学生グザヴィエは、交換留学制度「エラスムス計画」を使ってスペインのバルセロナに留学。欧州各国から来ている6人の学生たちとアパートで共同生活をはじめる。

カタルーニャ語で進められる授業について、「公用語じゃないと留学生には辛い」とグザヴィエは仲間と愚痴っていた。一方、イザベルという留学生が授業中に堂々とその件で教授に抗議するのを見て、グザヴィエは彼女に敬意と関心を抱く。

家賃値上げからメンバーを増やすことになり、グザヴィエはイザベルに声をかけ、ルームメイトとなる。イザベルが部屋にガールフレンドを呼んだことから、彼女がレズビアンであるとグザヴィエは知る。

パリにいる恋人のマルティヌとはすれ違い、勉強に専念しようにもイザベルがガールフレンドといちゃつくところを想像してしまい、悶々とするグザヴィエ。バルセロナへ向かう飛行機で一緒だったフランス人夫妻に、留学したてのときから世話になっていたグザヴィエは、夫の転勤についてきただけの引きこもりがちな主婦アンヌ=ソフィに思いを馳せる。

だが、彼はプレイボーイでもなんでもない平凡な青年なので、彼女をうまく口説く自信がないことをイザベルに正直に打ち明ける。するとイザベルは彼を女性役に見立てて、レズビアン流「女の口説き方」をコミカルかつエロティックにレクチャーする。イザベルの指南を素直に実践したグザヴィエは見事にアンヌ=ソフィを射止めるが、調子に乗って強気になるグザヴィエに、女性を抑圧したり暴力的に扱ったりしてはいけないとイザベルは静かに釘を刺す。ただし、映画の終盤で、グザヴィエとベッドに横たわるイザベルに、「あなたが女だったらよかったのに」というセリフを言わせるのはやりすぎかも。

ここに紹介したエピソードは、映画全体から見て決して些細なものにはとどまらない。多数派が存在しない共同生活では個人個人がマイノリティーであり、お互いを尊重しなければ共存できない。この作品ではどの人種やセクシュアリティも、互いに学び合う価値のある文化として対等に描かれている。その舞台がバルセロナであることは、ガウディの風変わりな建築が歴史的文化財産としてとけ込んでいる町並みを見れば納得がいく。

(*この記事は、ふぇみん2010年7月25日号に掲載されたDVD評の再掲です)


映画情報:2002年 セドリック・クラピッシュ監督 2003年セザール賞 - 新人女優賞(セシル・ドゥ・フランス)、2003年リュミエール賞 - 若手女優賞(セシル・ドゥ・フランス
スパニッシュ・アパートメント(Wikipedia)
公式サイト

DVD情報:2004年 フランス=スペイン 122分 1490円(税込み) 発売・販売元 20世紀フォックス ホーム エンターテイメント